昼下がりの診察室
by朔夜さま

 長閑なある日の昼下がり
 闇医者の診療所では、マモルと小宮がこんな会話を交わしていた

「ねぇ ねぇ、マモルちゃん オジサンが教えてあげるから一緒にやろうよ」
「え〜〜〜 小宮のオジサン、ネチっこそうだからな〜 オーナーと似てそうだし」
「まあまあ、そんなコト言わないで ちょっとだけでいいから付き合ってよ」
「またぁ そんなコト言って… ん〜 いっつもお昼ご飯、奢ってくれるから仕方ないか。少しだけだよ 今日は俺、疲れてるし」
 こんな事だったら、お昼ごちそうになるんじゃなかったなって思ってみてもあとの祭り
「なんだ 昨夜、ヨシ君にたっぷり可愛がってもらったんか」
「オジサン、そんなコトばっかり言ってると相手してあげないよ」

 ―――――――数分後

「オジサン まだ〜 俺もう疲れちゃったよ」
「まだまだ 若い者には負けられん」
「オジサンが先に誘ったんじゃん」
「そんな口を利くと、えい! こうしちゃうぞ!」
「あん そんなことしたら…… ちぇっ オジサンも大概しつこいね よし!」
「あっ マモルちゃん ダメ、ダメだってば そんなコトしたら、オジサン出しちゃうよ」
「えー! そんなコト言ったって  俺は、大きい方がいいもんね〜」
「そんな、大きい方がいいって っあ、ああっ……」
「へへへ〜 オジサン、意外とあっさりだったねぇ」
「…………」
「ねぇ ねぇ〜 闇医者も一緒にやろうよ〜 たまにはいいじゃん」
「えっ 私もですか?」
「うん」
 マモルのお尻にはしっぽが生えていて、ブンブンと振っているように闇医者には見えてしまった。
「マモル君に頼まれたら嫌とは言えませんね。ちょうど患者さんも引きましたし、一段落して手も空いたので夕方まで大丈夫でしょう。私も仲間に入れてもらう事にしましょうか」
「わーい! 闇医者、そんなに付き合ってくれるの。嬉しいなぁ」

――――――またしても数分後

「…うっ 闇医者って、どこで覚えたの?」
「さぁ マモル君には内緒です」
「闇医者って上手だよね 俺、負けそう。でも、小宮のオジサンには負けたくないなぁ!」
「褒めていただいて嬉しいですが、手加減しませんよ」
「……うっ あ、ああっ」
「私の勝ちみたいですね。でも、マモル君すっきりした顔してますよ」
「だって……」
 この時診察室のドアが突然開き、少し急いだ様子の中野が入って来た。
 なぜなのか、口に咥えたタバコの先に火は点っていなかった。
「おお! ヨシ君、ちょうどいい所へ来た」
「……いい所って みんなで何をしてるんだ」

「え? 何って カードゲームですけど」
「見て分からんか? カードゲームだけど なぁ」
「カードーゲーム!! 中野もやる?」

 三人が口々に答えた。
 すかさずマモルが続けて話しかける
「中野、聞いて聞いて。闇医者すっごく上手くて、強いの。あれくらいコテンパに負けちゃうとすっきりするよ。でね、でね、小宮のオジサンはネチっこそうなのに弱いの、カードの出し惜しみするんだよ。俺、いっぱい勝っちゃった〜 やっぱ数字が大きいとすかっとするよね」
「……少し黙ってろ」
 眉間に皺を深く刻み苦虫を潰したような中野の顔とは対照的に、三人の顔は晴れ晴れとしていて、とても楽しそうだった。



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