Sweetish Days
〜しっぽ編〜
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おまけ-



「幹彦さん」
ツカサの可愛らしい声が部屋に響く。
「一緒にシャワー浴びる?」
ツカサのお誘いは本当に無邪気。
でも、それは「お風呂でエッチしようよ?」と言ってるのと同じだったりするから厄介だ。
「先に入っておいで」
一緒に入るのが嫌でそう言っているわけじゃない。
だから、笑顔でさらっとそう答えた。
「どうして一緒はダメなの?」
不満そうな顔はしていなかったけど、やっぱりどこか納得できないのか少しだけ首を傾げた。
「ツカサが疲れないように、ちゃんとベッドでしよう。な?」
にっこり笑って答えたら、
「うん。その方がいっぱいできるもんね」
3倍にっこり笑い返された。


ツカサが風呂に行っている間に部屋を片付けてベッドの周りを整えた。
備品のチェックをして、飲み物を用意して。
携帯をマナーモードに切り替えた。
「幹彦さん」
いつの間に戻ってきたのか、大きなバスタオルを羽織ったツカサが俺を見上げていた。
「ツカサ、ずいぶん早いけどちゃんと温まってきた?」
「うん。幹彦さんも行ってきて。僕、布団あっためておくから」
「風邪引かないようにちゃんと髪を乾かしてあったかい格好してろよ?」
濡れた髪。
しかも素肌でベッドなんて、絶対まずいもんな。
「ね、幹彦さん」
「なに?」
「早く戻ってきてね?」
可愛いリクエストについ頬が緩む。
「分かったよ」
ツカサのほっぺにキスをしてバスルームに行こうとしたら、
「あ、幹彦さん」
ツカサが俺の服を引っ張った。
「うん?」
振り返ると妙に真剣な目で俺を見上げていた。
「あのね、パジャマの上だけと、学校の制服と、普通の服と、エプロンだけと、ソックスだけだったら、どれが一番好き?」
本当に何度でも面食らうけど。
「……パジャマがいいかな」
辛うじて普通に返した。
「じゃあ、そうする」
背伸びをするツカサにキスをして、ひそかに苦笑しながらバスルームへ向かった。


部屋に戻るとパジャマ姿のツカサが布団から顔を出した。
布団の中なので見えないけど、多分、本当に上だけしか着ていない。
「あったかくなったよ」
髪を乾かしながら携帯に入った松浦のメッセージを確認をする。
ツカサのくりくりした目が俺の動きを追っている。
標準的な高校生より、かなり子供っぽい。
でも、それは見た目の話で。
「幹彦さん」
「ん?」
「……せっかくあっためたんだから早く来て」
ちゃんとこんな風に誘惑もしてくれる。
ベッドに潜り込むとすぐに脚が絡み付いてくる。
やっぱりパジャマは上だけしか着ていないらしい。
「幹彦さん、なんでパジャマが好きなの?」
そんなこと聞かれても、理由なんてないんだけど。
「ツカサに似合うから」
そんなどうでもいいような返事をツカサは不思議そうに聞いていた。
「でも、あんまり色っぽくないよね?」
ツカサが自分のパジャマの柄を確認しながら尋ねる。
確かに明るい青と緑のチェックのパジャマは色っぽくないけど。
「俺はパジャマを脱がせるの、結構好きだけどな」
ゆったりとしたパジャマのボタンを外して、華奢な身体が露わになっていく過程が妙に色っぽくて、ドキッとする。
そんな俺の気持ちはツカサにはわからないだろうけど。
「ふうん……じゃあ、」
くすくす笑いながら俺の首に腕を回した。それから。
「早く脱がせて?」
無邪気にねだる小悪魔にキスをして、パジャマのボタンに手をかけた。
綿の布地がスルリと滑り、肩が剥き出しになる。
艶やかな肌の感触を確かめながら、まだ体温の残るそれをそっと床に落とした。
「幹彦さん、」
「なに?」
「……僕、キスしながら、したい」
ほんのり染まった頬に唇を押し当てて、それに答える。
「いいよ。おいで」
華奢な体を抱き上げて膝に座らせる。
ツカサも俺の肩に手をかけて体を支えながら受け入れる準備をした。
「無理しなくていいからね」
腰を支えながら、舌先で滑らかな胸にある突起を弄ぶ。
「あ、ダメっ、ん……あっ」
その声に煽られ、俺の悪戯は加速していく。
「……や、幹彦さん…っ」
頬を染めて身悶えする、その仕種が艶めいて映る。
「ツカサ……可愛いよ」
困ったように目を伏せて、俺の体にしがみつく様子も愛らしい。
「じゃあ、ゆっくり、な?」
高まったものをツカサの入り口にあてがって、静かに腰を落とさせる。
「ああっ、ん……んん…っ」
目の前で濡れた唇が掠れた声を吐き出す。
薄く開いたそこに舌を差し入れて深いキスを貪った。
「ん、……っ」
一方で少しずつ体を押し開いて飲み込まれていく感触。
埋められた部分は熱に包まれてさらに膨張する。
「ツカサ、痛くない?」
唇を離し、首筋に舌を這わせながらゆっくりと胸まで下りる。
触れる前から硬く立ち上がっている突起に歯を立てる。
「ん……っ、あ、」
こうしていることが心配になるほど華奢な体なのに。
「……ん…ん、……気、持ちい……い」
体を沈めながら、うわ言のように繰り返す。
切れ切れの言葉が耳に入ると、抑えていたものが外れていった。
仰け反って目の前に晒された喉にきつく徴しをつける。
明日になれば少しは薄れるかもしれないけれど、嫌でも人目につく位置。
赤い痕は間違いなく俺の所有欲だ。
「ごめん、ツカサ。服着ても見えるかもしれない」
それでもツカサはうっすらと濡れた瞳のまま首を振った。
「…いいよ……もっと…して……」
喘ぐような返事が身体の温度を上げる。
あどけない表情が見えなくなった頃には俺の理性もすっかり消え失せていた。
昂ぶったものを根本まで呑み込んだ細い腰をギュッと抱き締めて突き上げる。
「あ、んっ…あ、っ、幹……彦さ……ああっ、」
喘ぎ続ける唇を塞いで体の感覚だけを追う。
「んん……んっっ、」
時々唇を解放して首筋や耳を舐め上げる。
快感に肌が粟立ち、受け入れていた場所が俺を締め付けた。
「ああっ、ダメっ……う、んんっ、」
いっそう激しく突き上げるとギュッと目を閉じた。
濡れた睫毛が震えて、体がビクンと痙攣する。
「い…くっ……あっ…っんん」
約束通り唇を塞いで絶頂を貪る。
きつく抱き締めた体から迸る白い液を感じながら、同時にツカサの中に自分の熱を放った。



「ツカサ、大丈夫?」
腕の中で眠そうな瞬きをしている顔を覗き込んだ。
「……うん」
俺の胸にぴったりと頬を当てて、時々すりすりと鼻先を擦りつける。
最初は罪悪感を持ってしまうほど華奢だった体も、少しずつ大人びてきた。
そんなことに気付くたびに俺は何故か心配になる。
「ツカサ、大人っぽくなったな」
柔らかい髪も見上げる瞳もそのままだけれど。
「……前の方がよかった?」
「そんなことないよ。どうして?」
「だって、ずっと女の子と付き合ってたなら、あんまり男っぽくない方がいいと思って」
だから、ナース服とメイド服なんて話をするんだろうか。
「ツカサ」
初めて会った時のツカサは、本当にまだ『男の子』って感じだったけれど。
「俺はツカサが成長していくのが嬉しいよ」
毎週、会って、話をして、笑い合って。
大人になっていくツカサを一番近くで見ていられたら、と思う。
「ほんと?……あ、でも、もう大きくならないかも」
真剣に考え込んでいるツカサの柔らかな唇にキスをして、ギュッと抱き締めた。
「ツカサ」
すっかり大人になっても、こうして俺の側にいてくれるだろうか。
「なぁに?」
子供っぽい返事に笑いながら、もう何度目もしたはずの質問を繰り返す。
「俺とずっと一緒にいてくれる?」
こんな約束なんて何にもならないのかもしれないけれど。
「うん。ずっとね? 約束だからね?」
素直な返事。
それも変わらないだろうか。
「ね、幹彦さん」
「何?」
「僕が本当に大人になったら、もう子供扱いしないでよ?」
子供だと思っていないと言ったら嘘になる。
けれど、本当にツカサを子供だと思っていたら抱いたりはしなかっただろう。
「俺、そんなに子供扱いしてるかな?」
「してるよ。すぐに『宿題やったの』とか『家の人に言ってきたの』とか聞くし」
口を尖らせるツカサはやっぱり子供っぽいけれど。
「分かったよ。しないって約束する。……でも、それはツカサが本当に大人になってからだからな」
まだまだ先は長い。
大学に行って、成人式を迎えて、社会人になって……。
ツカサのスーツ姿なんて今は想像もできないけど。
「うん……あ、でもね、」
「ん?」
「大人になっても、少しは甘えていいんだよね?」
ツカサの唇の柔らかい感触が胸元をくすぐる。
「甘えてくれなくなると、俺が淋しいよ」
本当はいつまでもこのままでいて欲しい。
素直で甘えん坊で、奔放で泣き虫で。
「じゃあ、いっぱい甘えてもいいのかな?」
えへへと笑って俺の頬にチュッとキスをした。
その子供っぽい仕種と不釣合いなほど艶めいた眼差しに俺は簡単に誘惑される。
「ツカサ」
「なに?」
「もう一度、抱いてもいいか?」
見上げた瞳がキラリと光って。
「えー、どうしようかなぁ?」
悪戯っぽく笑ったけど。
すぐにそれは撤回された。
「なぁんて。……ホントは幹彦さんがそう言ってくれるの、待ってたんだ」
本当に振り回されてばかりだなと苦笑しながら。
「ツカサ、大人になってもあんまり俺を困らせるなよ?」
また遠い日の約束を取り付けようとする。
「幹彦さんが困るようなことなんて絶対しないよ」
ムキになるツカサが愛しくて。
「その言葉、ちゃんと覚えておいてくれよ?」
ずっとこうして俺の腕の中にいてくれるなら。
どんなに振り回されても、きっと楽しいだろう。


                                    〜 fin 〜

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