<海!> -おまけ-
たくさん泳いで疲れた後はおやつの時間。
でも。
「おやつはスイカだよ。がんばろうね、まもちゃん、ぐれちゃん」
なんでがんばるんだろうって思ったら。
「はい、これ持って。目隠しするから、これつけてね」
お姉さんが作ってくれたぐれちゃんと俺専用の目隠しは、子猫サイズで目のところにちゃんとネコの目が描いてあった。
「二人ともスイカ割りやったことあるんか?」
小宮のオヤジに聞かれたけど。
ぐれちゃんも俺もはじめてで、闇医者からやり方を教えてもらった。
「じゃあ、順番を決めようね」
くじ引きをして。
最初はぐれちゃんで、次がお姉さんで。
そのあとが闇医者で、あとは患者モドキ。
「じゃあ、最後がマモル君だね」
「うん、がんばるー!」
でも、結局、みんなスイカには当たらなくて。
俺が割れなかったら、もうスイカは食べれないのかもしれないって思ったから、すごく頑張ろうって思った。
ぐるぐるって3回まわって。
ついでにちょっと目も回って。
それから、どっちに歩けばいいのかみんなに教えてもらった。
「マモル君、もっと左だよ」
「左ってお茶碗持つ方の手だからなあ?」
小宮のオヤジがそう言ってくれたけど。
「……おちゃわん持って食べないからわかんないかも」
でも、たぶんこっちかなって思ったほうに思いっきり走ってみた。
そしたら、いきなりゴツンって音がして。
「マモル君!? 大丈夫!?」
気がついたら、闇医者の手が俺のおでこをなでていた。
「……痛いかも」
目隠ししてたから、どうなったのかは見えなかったけど。
何かにぶつかったらしいってことだけはなんとなくわかった。
「すごいや、まもちゃん。スイカのある場所がわかったんだね!」
ぐれちゃんがほめてくれて。
それがスイカだったってことはわかったけど。
でも、ぜんぜん割れてなかった。
ちょっとガッカリしてたら、
「マモル君とぐれちゃんじゃどんなに頑張っても割るのは無理だからね。当たればいいよ」
闇医者がにっこり笑って。
「そうだなあ。それに、食べるならちゃんと切ったスイカがいいからなあ」
小宮のオヤジがそう言ったから。
その後はちゃんと切ったスイカをみんなで食べた。
でも、中野だけはタバコの方がいいみたいで。
「ねー、食べないの? おいしいよ?」
誘ってみたけど、結局スイカは一つも食べてなかった。
一緒に食べたかったけど。
でも、中野はきっとスイカが好きじゃないんだって思ったから、黙ってた。
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