夏の猫リクエスト






<海!>  -おまけ その2-


おやつの大きくておいしいスイカをたくさん食べたあと、ぐれちゃんと二人してコロンと横になった。
「おなかいっぱいだねー」
「じゃあ、次はお昼寝だね」
二人で相談して、小宮のオヤジが立ててくれた楽しい色をした大きなカサの下で昼寝をすることになった。
そこなら中野もいるから、絶対一番そばで寝ようって思ったのに。
「あれ? 中野さん、車に戻っちゃったんですか?」
気がついたら、もういなくなってた。
「仕方ないですよ。あの恰好じゃ暑くてかなわんだろうし」
「それに、さすがのマモルちゃんも昼寝で溺れたりはしないだろうからなあ」
「そうですね」
闇医者が笑うのを聞きながら、ちょっとガッカリしたけど。
でも、泳いだあとからなんだかとっても眠くて。
みんながクスクス笑ってる間にいつの間にか寝てしまった。

気持ちいい海のにおいの中、ぐれちゃんと二人でぐっすり眠って。
その間に、うきわがなくても泳げた夢を見てとっても楽しかったんだけど。
起きたら時にはちょっと夕方になってて。
ついでに鼻の頭がピリピリしてた。
「痛いかも……。ぐれちゃんは大丈夫?」
って横を向いてみたけど。
ぐれちゃんはまだ寝てて。
でも、そこはまだ日かげだったから大丈夫みたいだった。
「あれ、マモル君、日陰が移動して焼けしちゃったんだね」
「そうかも」
待っててねって言って。
闇医者が冷たい水をつけたタオルを鼻に当ててくれて。
「気持ちいいー」
「ヒリヒリして気になっても触っちゃダメだよ?」
そのあと少しだけ笑いながら、赤くなった鼻の頭を写真に撮ってくれた。
「いい思い出になるようにね」
来年も来られるといいねって言われて、「うん」って頷いて。
そのあと。
「中野って日に焼けたこととかあるのかなぁ?」
ちょっと気になって聞いてみたけど。
「あー、どうかなぁ……中野さんにも子供時代はあったと思うんだけどね」
闇医者が苦笑いして。
「ヨシ君の子供時代かあ。想像できないなあ」
「っていうか、あんまり想像したくないねえ」
「あのまま小さくしただけだったらどうしよう」
患者モドキがみんなして顔を見合わせて。
そのうち。
「……その話、やめよっか。なんか怖い夢見そうだし……」
誰かが小さな声でそう言ったから。

その話はなかったことになったみたいだった。


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