Halloweenの悪魔
年の順





そのあとテーブルにはまた新しいお菓子が並んだけど。
フェイさんは出されたカップに口をつけることもなく、「仕事が残っていますので」と言って出ていってしまった。
さすがにバジ先生も引き止めたりはしなかったけど、ちょっとつまらなそうな顔になった。
仕事がなかったとしても楽しくお茶に加わったりはしなかっただろうけど。
でも、一応「家族みたいなもの」なんだから、あんまり好きじゃなかったとしてももっと普通に話してあげればいいのにって思う。
「バジ先生はどうして短い髪が好きなんですか?」
自分が好きだから髪を切れっていうのはちょっとわがままだって思ったから聞いてみた。
勉強部屋を出たら先生って呼ぶなと怒られたけど、質問には答えてくれた。
「どうしてって言われてもな」
最初にフェイさんに会ったとき髪は短かったらしい。
とても似合っていたんだと少し照れたみたいに笑った。
「バジが好きなのは短い髪じゃなくて、髪が短かった頃のフェイなんだろ」
自分が生まれた時はもう今とすっかり同じだったから、昔のフェイさんがどんなだったかは知らないってアルが言う。
肖像画や写真みたいなものもないので、ニーマさんも短い髪は見たことがないらしい。
「ふうん、そうなんだ」
今ここにいる人の中でその頃を知っているのはばあやさんくらい。
もちろん王様やフェイさんの先生であるイリスさん付きの魔術師さんは見たことがあるだろうけど。
「だから、『昔はよかった』ってことじゃなくてな、単にフェイシェンには短いのが似合うって話だ」
とにかくバジ先生はフェイさんの短い髪が好き。
それはぜんぜん悪いことじゃないけど。
でも、長さくらい自分の好きにさせてあげればいいのに。
「じゃあ、なんでバジはいつも『昔は可愛かった』って言ってるんだ?」
「あー……まあ、今でも可愛いとは思ってるぞ」
こういう状態で本人に言うのはちょっとアレだろ、って言われたけど、どういう意味なのかさっぱり分からない。
それにしても。
「かわいいのかぁ……」
僕から見たフェイさんはかなり大人っぽい感じなのでちょっと意外だ。
「フェイさんっていくつ?」
こっそりアルに聞いてみた。
「たぶんニーマと同じくらい」
身近にいる人の中で一番若いのはきっとフレア。その次がルナ。
二人とも同じくらいに思えるけど、弟なんだからフレアのほうが若いに決まっている。
見た目だけならイリスさんが僕らに近そうだけど、実際の年齢とは合ってないらしいので特別枠。
フェイさんはルナよりもちょっと上くらいで、ニーマさんもそれくらい。
門番のサンディールはもうちょっと上で、人間の見た目でいうと25歳から30歳の間って感じ。
バジ先生と王様は子供の頃から友達だというので、二人はきっと同じくらいの年。
執事さんはそれより上だけど、ばあやさんは王様のナニーなので、それよりもさらに年上のはず。
一番年上なのは多分庭師のおじいさんだけど、どれくらい上なのかは見当もつかない。
ミミズク司書さんはイリスさんと同じで特別枠。人間サイズになってもらったらわかるのかもしれないけど、今のところは白と淡いブルーグレーのミミズクって感じで、ふんわり丸顔。かなり年齢不詳だ。
お城の住人で僕らより年下なのはたぶんルビーくらい。
……まだタマゴの中だけど。
まあ、それはともかく。
「かわいいのかぁ」
もう一回同じことをつぶやく僕の隣で、アルも一緒に首を傾げた。



                                     fin〜

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