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気がついた時、俺はちゃんと自分の部屋にいた。
帰巣本能ってすごいよなと思ったが、ソファに樋渡が座っているのを見て、そうじゃないんだとわかった。
「樋渡ぃ〜、送って来てくれたんだぁ?」
どうせシラフじゃすんなり声が掛けられなかっただろうから、酔っ払ってて良かったな、と脳の片隅で思った。
俺は絶好調に酔っ払いだったけど、それでもなんとかシャワーを浴びた。
トランクス一枚でバスルームから出てくると、樋渡の邪魔をした。
「何、してんだぁ?」
覗き込んでみたら、なんのことはない。着任報告書だった。
「そんなもん、あした会社で書けよー……。樋渡、家で仕事するような奴じゃなかったよなあ?」
座っているのにフラついて樋渡にぶつかってしまった。
「森宮、大丈夫か?」
「なに? 俺? なんで?」
「大丈夫なら、俺は帰るから」
そう言ったとき樋渡はちょっと淋しそうに見えた。
だから、無意識のうちに引き留めてた。
「いいよ、泊まってけよ。ほら、樋渡もシャワー浴びて。着替え、着替え……? あ、いいや。進藤のがあるはずだっ……って、あ、どこだっけ?」
クローゼットをごそごそ探しまわり、バスタオルと進藤が置いて行った下着の買い置き、俺のTシャツを樋渡に渡した。
それらをむぎゅっと樋渡に押し付け、俺はさっさと先にベッドに入った。
で、あっという間に寝た。



夜中に目が覚めた。
そうだ、樋渡に枕と布団を出してやらなければ、と思ったのだ。
でも、樋渡はちゃんと毛布をかけてソファで寝ていた。
それを確かめたら寝るはずだった。
けど、俺は自分が思っている以上に真っ当な思考回路を保っていなかった。
つまり、まだ酔っ払っていた。
「樋渡ぃ……」
いきなり樋渡を起こそうとした。
もちろん、樋渡は熟睡していた。
起きるはずはない。
「冷たいなぁ、樋渡……」
で、何故か俺は樋渡が寝ているソファの下で寝てしまった。
寒いと思ったことと、温かいと思ったことだけはうっすらと記憶していた。
だから、目覚めた時、自分がちゃんとベッドにいて、しかも隣に樋渡がいたことも驚かなかった。
樋渡はちゃんと服を着ていた。俺は風呂から出てきた時と同じで、トランクス一枚だった。
時計を見たら4時だった。
まだ大丈夫だと思って、また寝た。


浅い眠りは夢になる。
妙にリアルな夢の中で樋渡に抱き締められていた。
あの夜のように、俺を『麻貴』と呼ぶ。少し苦しげな表情。
しっかりとした腕の力と、樋渡の下半身の熱を感じた。

なんで俺を抱き締めるんだろう。
男なんて抱いて楽しいかよ?
おまえならいくらだって相手はいるのに。
『麻貴は、俺が嫌いなのか?』
夢の中でも樋渡は淋しそうだった。
『そんなことないけどさ……』
本当はずっと忘れられなかった。樋渡の唇も手も、胸の筋肉も、全部。
『あの日は……驚いただけなんだ。ホントは、怒ってなんか……』
半分しかない意識の中で、俺は樋渡のことを考えていた。
まだ酔いも醒めてはいなかったし、頭はグルグルでぐちゃぐちゃだった。
中途ハンパに繋がっているだけの思考回路はどんどんわけのわからない夢となり、俺は夢の中で樋渡に抱かれていた。
『う……もっと、』
いきたいのに、いかせてもらえない。
もどかしくて苦しい夢だった。



「おはよう」
枕もとの時計を見たら、まだ5時半だった。
なのに何故か樋渡に起こされた。
俺もさすがに酔っ払ってはいなかったが、まだ完全には酒が抜けていなかった。
「……んだよ、まだ、5時半……7時に起きても間に合うのに……」
昨日の少し遠慮がちな樋渡は影も形もない。目の前にいるのは昔と同じ、遊び人で自信家の樋渡だった。
「麻貴」
しかも、朝から俺の名前を呼び捨てにした。
「名前で呼ぶなって……」
徐々に眠気が醒めてくる。
この状況はなんだろう?
もしかして、なんか、ヤバくないか?
「抜いてやるよ」
「……あ?」
マヌケなリアクションをする俺の股間に樋渡の手が滑りこんだ。
まずいことに、モロ起っていた。
「ちょ……っと、樋渡っ!」
いきなり目が覚めた。
「どんな夢見てたんだ?」
「どんなって……」
その瞬間に樋渡とヤってるシーンがドカンと頭に蘇って、カッと頭に血が上った。
「寝言、言ってたぜ。『入れてくれ』って。何を、どこに、入れて欲しいって?」
ちゃんと言ってみろよと言われて、顔どころか体まで一気に赤くなるほどの衝撃だった。
意地悪い口元を見上げたまま固まっている俺を見て、樋渡は不意にクスッと笑った。
それから俺の唇のすぐ脇にキスをした。
「抱いてもいいか?」
その言葉のあと、俺の返事を待たずに唇は塞がれた。
同時に俺の体は隅々まで奴の手で愛撫された。
駄目と言ったところで俺はすでにはちきれそうなほど張り詰めていた。
だから、樋渡の手は死ぬほど気持ちよかった。
「あ……やめ……」
「やめて欲しい? おまえがそう言うならやめるよ」
半分は意地悪。けど、前科があるから半分は本気なのかもしれない。
俺の口からはもう喘ぎ声しか出なかった。
「いいよ、麻貴……気持ちよくしてやるから……俺に任せて」
樋渡の唇が胸に降りてくる。
既に硬く感じ上がっている乳首に吸い付く。
「……ぅ、んっ……」
ピチャピチャと音がして、突起を強く舌で転がされる。
「麻貴……」
樋渡の声が甘く響いた。
唾液でヌルヌルになった胸は息がかかるだけで快感をもたらした。
それを確認すると、樋渡の舌は俺の下腹部へと移動した。
そして、なんのためらいもなく口に含んだ。
高まりはもうほとんどピークだった。
「樋渡……ダメ、ほんと……あっ、」
そう言った瞬間から樋渡の責めは激しくなった。
女の子のおっかなびっくりのフェラとは違って、一発でイッてしまいそうなところばかりをついてくる。
「ダメっ……樋渡っ、あっ×××」
ここのところずっと忙しくて、ベッドに入るとすぐに眠っていた。
自分でだって全然してないっていうのに……。
ビュクビュクと溢れ出る精液を樋渡は涼しい顔で飲み下した。
ハァハァと肩で息をする俺の髪を撫でながら、テーブルにおいてあったニアウォーターで口を濯いだ。
「……濃いなぁ。これじゃ、変な夢も見るはずだ」
顔も上げられないくらい恥ずかしかった。
なのに樋渡は涼しい声で続ける。
「キスしたいんだけど、自分の精液の味は知りたくないだろ?」
「バカ……樋渡っ……」
よくそんな恥ずかしい事が言えるよな。
「麻貴に許してもらえてよかったよ」
そんな言葉と一緒にペロっと俺の頬を舐めた。
心臓がバクバクして、返す言葉が何一つ思い浮かばなかったけど。
「タバコ吸っていいか?」
「駄目だ。俺んち、禁煙」
こういう時だけはちゃんと答える俺。
「彼女に怒られる?」
「いねーよ、そんなもん」
「女じゃ、イケなくなった?」
「なにバカ言って……」
「じゃあ、あの刺激的な寝言は? 聞いてるだけでイキそうだったぜ」
俺はまたそこで言葉につまった。
自分のおぼろげな記憶でも、それは口にするのも憚られるほど強烈な夢だった。
鬼畜そのものの樋渡が俺を犯す夢。
放出することを許されなくて、俺は樋渡が望むままに恥ずかしい体位でやられまくる。
卑猥な言葉を無理矢理言わされて、言っている側から奥まで突かれて、感じる場所を擦られて、入れられたままグリグリと腰を動かされて……。
「俺、どんな寝言……」
『いい』とか『イク』とかならまだカワイゲもあるだろうけど、きっとそんなんじゃないはずだ。
「そりゃあ、言えないな。俺でも口にするのが恥ずかしいようなスッゲーやつだったとだけ言っておこう」
今日の樋渡は最悪だ。
とても俺とのことを気にして辞表を出したヤツとは思えない。
「麻貴」
「名前で呼ぶなって……」
「寝言ではそう言ってなかったけどな?」
ニヤニヤ笑う。
俺、何を言ったんだろう。
『名前で呼んで』とか……?
いや、そんなことは言ってないだろう??
でも、考えれば考えるほど思い出されるのは卑猥な言葉で、俺はまた見る見る赤くなる。
体まで火照ってきた。
「じゃあ、夢にまで見たSEXを楽しもうぜ、麻貴ちゃん」
「ばっ……」
荒々しく唇が塞がれた。
息さえできないような激しいキスに体を捩る。
「無理矢理やられるのが好きなのか?」
「違っ……」
違う。けど。
――――……キライじゃないかもしれない。
それもあの日の樋渡のせいだ。
「俺は麻貴が相手ならどんなでもいいけどな。最初はプラトニックでもいいと思ってたくらいだ。……まあ、それはあっけなく挫折したけど」
樋渡はどこまで本気かわからないようなセリフを言いながら俺の体を抱き起こした。
「後ろから入れて欲しいんだろ? 四つん這いになれよ」
「俺、そんなこと……」
「言ったよ、喘ぎながら。『奥まで突いてかき回して』って」
言ってないと思うけど。でも、言ったかもしれない。
夢の中で俺は尻だけを高く突き出して、樋渡に犯されていた。
それを思い出すと樋渡の言葉を否定できず、俺は言われるままに四つん這いになった。
明るくなっていく部屋でははっきりと見えてしまう。
その羞恥心に煽られながら、奴の目の前に秘部を晒した。
「綺麗だ、麻貴……」
その言葉だけで俺の股間から透明な液が滴る。
樋渡の指がそれを絡め取る。
ヌルっとした感覚が背筋を粟立てる。
「けど、もうヌルヌルだな」
クチュ、という淫猥な音が辱めを受ける俺の秘部をヒクつかせる。
「入れて欲しい?」
片手は休むことなく俺の硬くなったものを高める。
そして反対側の指で後ろをなぞり始めた。
触れられるたびにヒクヒクと動くのが自分でも分かった。
「大丈夫。痛くないようにゆっくり解してやるよ」
スムーズに出し入れされる指。
もうそんなに身体ができ上がっているのかと思う事さえ恥ずかしかった。
「それとも痛くして欲しいか?」
俺はあわてて首を振った。樋渡の声に笑みが交じる。
「嫌がる顔もなかなか可愛い」
ヌプッという音がして唾液の絡まる指が侵入してきた。
自分で与える刺激とは違う変な圧迫感を感じた。
「嬉しいからってそんなに締め付けるなよ。これじゃあ、俺のは入んないぜ?」
モノを扱く手が早くなる。そのまま強くこすり上げて俺から喘ぎ声を絞り取る。
「あ、あっ……」
けれど、イキそうになるとすぐに手は止められた。
まるで俺の感覚が分かるかのような絶妙なタイミングだった。
「……ひ……樋渡……」
「駄目だ。いかせて欲しかったら、カワイくおねだりしてみろよ」
「……やめろって、あっ、んっ……」
「なんでだ? 寝てるときは『いかせて』って可愛くねだったじゃないか。起きてると言えないのか?」
笑ったまま俺の腕を掴み、グイッと身体を起こした。
抱き寄せると顎に手をかけて、親指で唇をなぞった。
「このカワユイお口でねだって欲しいなぁ……」
自分の位置をキープすると今度は俺を仰向けにひっくり返して覆い被さった。
驚く間もなく唇を強く吸われて声さえ出せなくなる。
「……ん……っ」
その間も前に伸びた手は快感を与え続け、硬いものが俺の腹に当たった。
やめろと思いながらも、俺は無意識のうちにそこに手を伸ばしていた。
「麻貴、これが欲しい?」
俺を抑えたままゆっくりと起き上がって服を脱いだ。
投げ出された下着は先走りで濡れていた。
太くて大きい樋渡のものが俺の顔の前に突き出された。
「―――舐めて」



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