愛しの麻貴ちゃん


B型番外
(ちなみに進藤くん視点)


<しゃべるネコの都市伝説>


ネットめぐりをしていたら、気になることが書かれた掲示板を発見した。
「これ見てよ、樋渡」
それによると「人間の言葉を話すネコはしばらく経つと人型に変身できるようになる」らしい。
「へえ、そうなのか」
樋渡はものすごく関心を示していたけど。
「もし、森宮が人間になったらどうする?」
どんなにグータラでもマイペースでも子猫ならまだ可愛いけど。
人間の、しかもそれなりの年齢の男なんて、俺なら絶対に嫌だと思うのに。
「麻貴ちゃんも大人になったら人型になって、一緒におてて繋いで公園に散歩に行こうな?」
樋渡はもう森宮が人間になった時のことを想定して、あれこれと予定を立て始めていた。
「そうだな。麻貴ちゃんはどこか行きたいところがあるか? 俺は麻貴ちゃんと一緒ならどこでもいいけどな」
ゆるゆるデレデレ。
そんな樋渡の隣りで寝ている森宮はというと。
「なでなで&ちゅう〜」をしたくて仕方ない樋渡の鼻の頭を足で思いきり蹴飛ばして、
「いらない」
またしても何の遠慮もない返事をしていた。
今はまだ子猫だからこの程度で済んでるけど、大きくなって人型になって、もっといろんなことを自由に話せるようになったら、いったいどうなってしまうんだろう。
ものすごく心配になったけど、ちょっと想像しただけでもあまりに樋渡が気の毒だったので、それ以上は考えないことにした。
俺だって親友の不幸は見たくない。でも。
「麻貴ちゃん、大きくなってもきっと可愛いんだろうな。服も可愛いのをたくさん買ってやるからな。一緒にご飯食べに行こうな。何食べに行きたい?」
「ごはん」
微妙に会話になってないけど、それでもまあ楽しそうだった。
「麻貴ちゃん、やっぱり世界で一番可愛いな」
いつでも好きな時に自分の世界に行けてしまう樋渡には、全てが余計な心配なのかもしれない。
「麻貴ちゃん、愛してるよ」
「……いらない」
人生なんて、簡単に変わるものだ。
樋渡を見ているとつくづくそう思う。
「じゃあ、ほっぺにちゅうは?」
と言えば。
ぺぺぺぺペシッッ!!……と、高速パンチ炸裂。
だけど。
「ん〜、麻貴ちゃん、相変わらず可愛い手だな」

まあ、なんにせよ。
本人が幸せならそれでいいってことだ。

そんなわけで。
樋渡と愛しの王子様は、今日もとても楽しそうだった。


                                      end


Home    ■Novels   ◆ネコ麻貴部屋    << Back ◆ Next >>