<あれから一年>
イブもクリスマスも二人でワイン三昧。
少々疲れ気味で迎えた翌朝は、ちょうど良い感じに日曜日だった。
「もう起きるんですか?」
まだ少し眠そうな片嶋が布団から顔だけ出して尋ねた。
「ああ、新聞取ってくる。片嶋はまだ寝てていいぞ」
そう言ってみたけど、何を思ったかモゴモゴと起き上がってきた。
でも、顔が思いっきり眠そうだった。
「寝てていいって」
腹でも減ったのかと思ったんだけど、片嶋は首を振った。
「……一人だとあんまり暖かくないので」
狭い部屋だからエアコンの温度を上げればそれだけで十分暖かくなる。
それでもベッドが寒いなら、こたつもあるし、ホットカーペットもある。
けど、片嶋が言いたいのはそういうことじゃないんだろう。
寝ぼけているなりにキリッとした顔を作って俺を見上げていた。
「じゃあ、俺ももうちょっと寝ようかな」
片嶋の長い尻尾がぴんと伸びて、丸い目が俺がベッドに戻るのをじっと見つめる。
「ほら、片嶋、ここ来て」
冬毛バージョンで1.2倍程度に膨らんだ片嶋に腕枕をして。
「新聞、いいんですか?」
「いいよ、あとで」
片嶋が神様からもらったプレゼントは一年たった今でもあんまり活用されていないんだけど。
楽しそうに揺れるしっぽを眺めるのもいいもんだよなと思いながら、片嶋のおでこにキスをした。
「片嶋、俺へのクリスマスプレゼントは『人型で一緒に公園を散歩』がいいんだけど」
期待を込めて呟いたそんな言葉を「おやすみなさい」のひとことで流して、片嶋はすやすやと寝息を立て始めた。
まだ片付け終わっていないクリスマスツリーとワインの空き瓶。
それから、俺のパジャマのポケットに手をかけて、幸せそうな顔で眠る片嶋。
クリスマス翌朝の暖かくて甘い時間。
本日二度目の「おはよう」のあと、片嶋からプレゼントをもらえるだろうかと考えながらもう一度目を閉じた。
end
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