No Good !
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抱き締めたりキスしたりで、しばらくほんわかと緩んでいたくせに、堂河内はわりとすぐ我に返った。思っていたより冷静なようだ。
「そう言えば、海瀬。大人の男じゃなきゃダメだってホントか?」
また、ニイさんがいらんことを吹き込んだに違いない。
本当に俺を応援してくれてんのかぁ??
「そんなことねーよ」
「だって、写真もエラく年上のオトコばっかだったぜ?」
でも、よく考えたら年下と付き合うのは堂河内が初めてだな。
「そりゃあ、若い頃は、そういうのが、良かったから」
だから、なんで詰まるんだよ、俺は。
「年の近い男はあっさり振ってたって?」
「そうだけど」
若いヤツは強引で、勝手に突っ走るからヤなんだよな。
『痛い』って言っても無理やり続けるし。
「年上の方が上手いからなぁ」
あちゃ。
俺、もしかして、言ってはいけないことを……
「ふうん」
不満そうな返事。
男とは初めてなんだもんな。
テクニックとか微妙な加減とかを期待できるはずもなく。
「じゃあ、俺がしてもあんなにイイ顔はしてくれないかもしれないのか」
「ああ??」
堂河内がベッドの脇に立てかけてあったカバンから写真を引っ張り出した。
「ニイさんが貸してくれた」
わりと最近の写真だった。目を瞑っている顔のアップ。
けど、俺も初めて見る。
「何の時だろ??」
「去年の常連会だってさ」
もう半年以上前だ。
けど、記憶にない。
「なんだぁ??」
けど、言われてみれば『イクっ!!』って感じの顔だな。
でも、服着てるじゃん。肩が写ってる。
「……んー? なんだろ??」
俺は真剣に悩んでしまった。
酔って記憶がないなんてあの店では割りといつもの事だから、何があっても不思議じゃないんだけど。
「とにかく、年上の方がいいんだろ?その時もオヤジだったって……」
「あーっ……なんだ」
そうだ。来てた、来てた。オヤジ。って言っても、マッサージ師だ。
……ニイさん、絶対、俺と堂河内を別れさせようと思ってるだろ。
「今度、店に行ったとき、この時の写真見せてやるよ。全員、こうやって写真撮られた。『イクときってこんな感じ写真大会』だったんだ。ちなみに、背中マッサージ中だよ、これ」
「はあ?」
マジに気持ちよかったもんな。俺、内勤になってから肩こりが酷いんだよ。
……どうでもいいけど。
「とにかく、そんなことばっかりやってんだよ。あの店」
堂河内もバカだな。ニイさんの言うことを真に受けるなんて。
「けど、なんでニイさんこんな写真貸してくれたわけ??」
俺にだって滅多に見せてくれないのに。
「海瀬がやらせてくれなかったら、ゆすってみろって」
「会社にバラ撒くぞ、とか?」
相変わらずおかしいよ、ニイさん。
「そう。そんな気はなかったけど、いろいろおまえに聞いてみたくてさ」
「アホくさ」
面倒くさそうに吐き捨てると、堂河内がホッとしたような顔で笑う。
もしかして気にしてたのか……?
「な、堂河内、」
「ん?」
「やっぱ、今しよう。俺、ちょっと準備してくるから待ってろ」
俺はニイさんがくれたというローションを借りてバスルームにこもった。
急いで洗い直して、指で解して、4本入るようになってからベッドに戻った。
堂河内は借りてきた写真を広げてまじまじと見ていた。
俺の写真ばっかりだ。服は着てるが、見ようによってはちょっとエロい。
それにしても、よくもまあ、こんなに撮ったもんだ。
「海瀬、これ、カワイイな」
いきなり見せられたのは、成人式の写真。
つまり、振袖姿だった。しかも完全なる酔っ払いだ。
襟元が緩んでいる。
「アホ。そういうものに関心を示すと、おまえもニイさんに遊ばれるぞ」
「俺は大丈夫だろ?ニイさんの話では海瀬はカメラマンのお気に入りだからこんなにいっぱい写真があるらしいぜ?」
そういうことでもないんだけどな。
まあ、高校の時から入り浸ってりゃあ写真も溜まるってもんだ。
「無防備に酔っ払って格好のネタを提供するのが俺くらいだってことだろう?」
「いいや。客の中でもピカイチ可愛いってさ。ニイさんの彼氏は親バカだって言ってたけど」
「かもな」
堂河内が写真をヒラヒラさせながら言った。
ニイさんときたら、10も違わないくせに俺を息子扱いするんだから。
俺が店でオモチャになってるのも全てニイさんのせいだって。
「実際、カワイイじゃん」
堂河内もニイさん並み。
「ハタチの頃の話だろ? 何年前だと思ってるんだよ」
「まあね。けど、あんまり変わってないよ。今でも可愛い」
「あのなぁ……」
俺はおまえより二つ年上なんだぞ?
って、ここで年上ぶっても仕方ないんだが。
俺は腰からバスタオルを取ってベッドに潜りこんだ。
「で、大丈夫なのか?」
「ああ。多分な。堂河内、仰向けに寝て」
言われた通り仰向けになった堂河内のモノを口に含んだ。
「うわっ……。海瀬、いきなり??」
ガバッと起き上がったが、すぐに力尽きてベッドに沈んだ。
「……マジうまいな。……止めろって、いっちゃうだろ??」
「一回、出しとけよ。最初だから突っ走られても困る」
俺だって血は見たくないからな。
「わかったけど、離せって……口ん中に出しちゃうだろ?? ちょっと、海瀬っ……」
俺は目線だけ上げて堂河内に『NO』を伝えた。
「止め……、うわっッ××」
ドクドクとあふれ出る粘液を俺は無言で飲み下した。
それからキレイに周りも舐めとった。
一瞬、萎えたと思った堂河内のものはペロペロと周りを舐めているうちにまた硬さを取り戻した。
「海瀬、上手すぎ……」
堂河内の大きな手が俺の髪を梳く。
「……それに、色っぽすぎ」
髪を撫でた手がそのまま頬を包んだ。
じっと俺を見つめている堂河内の目の前で、すっかり硬くなったモノにゴムをかぶせてローションを塗りつける。
自分の後ろにもそのドロッとした液体を塗りこめた。
堂河内の視線を感じて、俺の先端からはすでに先走りが溢れて滴り落ちていた。
「上、乗ってもいいんだけど、ホントに久しぶりでさ……だから、後ろからゆっくり入れてくれよ」
「あ、ああ……」
堂河内はちょっと面食らっている。
初めてじゃ、無理もないか。
女の柔らかい体に慣れてたら、触り心地も違うしな。
「気分、乗らなくなったなら、ちゃんとそう……」
言えよ、と言うはずだったが唇を塞がれた。
「ダメだ、海瀬……俺、突っ走るかも……」
堂河内が俺の体を抱き締めた。
何も答えずに堂河内を引き剥がし、四つん這いになると背中に視線を感じた。
「もう、このまま入れていいのか?」
「ああ。けど、ゆっくりな」
片手で俺の腰を押さえながら、深呼吸していた。
押し当てられた先端が入り口を押し開いていく。
さすがにキツイ。
俺も呼吸を整えた。
ズルズルと増していく圧迫感も久々で、思っていた以上に苦しい。
「うっ、あっ……」
思わず声をあげると堂河内は腰を止めた。
「……ごめん、海瀬……ちょっと……待つから」
堂河内の声が掠れていた。
「……う、ん……」
俺も手短かな返事をするが精一杯だった。
腰を押さえていた堂河内の手が俺の内腿をさすった。
そして反対の手で俺の前を弄ぶ。
その快感に締め付けてしまいそうになる。
「海瀬っ……」
ちょっと悲痛にも聞こえる堂河内の声が俺を煽る。
さすられているものからは愛液が溢れ、クチュクチュと卑猥な音が漏れていた。
「……堂河内、もう、いいから……」
「いいのか? 奥まで入れるぜ?」
「ん……」
ズズッと内壁が擦れる感覚に体の奥が逆撫でされるような気がした。
不快なようで、痺れるような、妙な感じ。
「あっ、んっ……」
その圧迫感がようやく体に馴染んだ後も、堂河内は俺に遠慮して動いてくれなかった。
最初から淫乱発揮もどうかと思って我慢していたが、すぐに俺は焦れて自分から腰を動かした。
「……あ、海瀬……」
上ずったような声が背中に降ってきた。
それからゆるゆると抜き差しが始まった。
ゆっくりと抜かれて、やや激しく突かれる。それを繰り返されて俺はもう理性もなにもなくなっていた。
「あ、もっと……あ、ああっ」
「ん、海……瀬、いい?……気持ち、いい……?」
「あ、うっ……ん、い、イイっ……あ、」
もうすぐ絶頂という時に、堂河内は俺の体から引いた。
「な……ん……」
はあはあと肩で息をしながら俺は非難の眼差しを向けた。
けれど、そんな事はお構いなしに俺の体を仰向けにしてベッドの端まで引きずると自分はベッドに膝をつき、俺の足を高々と持ち上げた。
「ごめん、どうしても、海瀬のイク顔が、見たい」
堂河内の呼吸も荒かった。
興奮しているためか、熱気のせいか頬が上気していた。
すでに突っ走りモードらしく、俺の返事は待ってもくれない。
そのまま再び俺の中に埋めこんだ。
「あ、んっ……」
やや荒っぽい挿入に耐えかねて声をあげた。
けど、今度は動きを止めてはくれなかった。
「堂河内っ……」
叫ぶように呼んだ時、少しだけ俺の顔を見た。
「海瀬……?」
心配そうな瞳が見下ろしていた。
「……いかせて、俺、もう、ダメ……」
限界を訴えると、堂河内は少しだけ笑った。
「よかった。俺も。もう駄目」
腰の動きが速められ、二人の呼吸と喘ぎ声、濡れた音が部屋に響いた。
「あ、イクッ……」
叫んだのは俺だった。
堂河内は声を殺していた。
ゴムをつけていない俺の先端から液が飛んだ。さすがにもう水っぽい感じだったが、勢いよく俺の胸に飛び散った。
ビクン、ビクンと震えながら最後の液を搾り出すそこを堂河内は愛しそうに眺めていた。
終わるとそっと俺の中から引いて、少し笑いながら先端をぺロッと舐めた。
「笑ってる理由はなんだよ?」
気だるく問いかけると俺の腹をティッシュで拭きながら、堂河内はにんまりした笑顔を向けた。
「海瀬、3回目なんだもんな〜と思って」


……バーカ、4回目なんだよ。



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