No Good !
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後片付けが終わると、しばらく二人ともぐったりしてた。
俺はこのまま寝てしまおうと思っていたのに、堂河内がぼんやりと口を開いた。
「海瀬って、あんな色っぽい顔するのな」
俺の隣りで髪を弄りながら、堂河内は目を細めていた。
「そーゆーこと、面と向かって言うなよ」
寝た後、何故かいつもそう言われる。
自分では絶対見られない顔だから、そう言われるとむず痒い。
「マッサージ大会の写真とどっちが色っぽい?」
「イク時の方がぜんぜん色っぽい」
「へえ」
ふうっと堂河内がため息をつく。
なんだかポワンとしている堂河内がおかしくて俺は笑ってしまった。
「堂河内……大丈夫か??」
「え? 俺は大丈夫だけど……なんで?」
少し赤くなる堂河内は、会社とは全然違う。
なんとなく子供っぽく感じられた。
「なんか、ぼーっとしてる」
「だってさ。海瀬が……」
「俺のせいなわけ?」
「……うん。あんまり色っぽいから」
そこで困ったような顔されてもな。
「気のせいだろ」
男と初めてでここまで盛り上がれる堂河内はえらいと思った。
俺なんて男が好きだってちゃんと自覚してからずいぶん経って付き合い出したけど、最初にアレを口に入れたときは「うえっ」ってなったのにな。
堂河内はぜんぜん平気そうだった。
「なあ、ニイさん、おまえになんて言ったんだ?」
俺が堂河内を好きだから付き合ってやってくれとでも言ったんだろうか。
そういうことするキャラじゃないと思ってたのに。
「なんてって言うか……相談にのってもらった時にポロっと……海瀬が俺のこと気に入ってるって……」
なんだ、その程度か。
それにしても。
「相談って?」
そこでますます赤くなる堂河内が妙に可愛いんだけど。
「海瀬とさ、毎日会社で会ってるだろ? なのに、週末もいっしょに居たいって思うのは変かなあって……なんか、心配になって」
「ニイさんにそんなこと聞いたのか??」
それは相談相手の選択を間違えてるぞ。
「会社でも隣のシマで、ちょっと顔を上げれば海瀬が仕事してるの見えて、みんなで飲みに行く時も一緒で、なのに、週末もおまえとずっと一緒にいたいって思って、もう、どうしようもなくなって……」
どうしようもないほど思いつめてたようにも見えなかったけど。
他には相談できる相手、いなかったのかなぁ……
まあ、男が好きなんて普通は言えないか。
それでも店の客にでも相談した方がよほどマシだったような気がするけど。
「ニイさん、ロクなこと言わなかっただろ?」
堂河内もそれは否定しなかった。
「でも、まあ、海瀬にコイビトがいるのかとか、どう言うタイプが好きなのかとかいろいろ教えてもらって……」
「へえ」
そんなまともな会話をしたとも思えないんだけどな。
「で、なんでいきなりゴム持ってくるんだよ?」
「……来る者拒まずだから、やらせてはくれるんじゃないかって」
あのヤロウ……
俺の人格、疑われるようなこと言うなよ。
「もしかして嫌だったか?」
そんな捨てられた犬みたいな顔する堂河内を見たことはなかった。
「え? いや。おまえとヤリたいとは思ってたけど」
っていうか……俺ももうちょっと言葉を選べって。
「それはさ、俺だから? それとも溜まってたから?」
「両方。でも、まあ、溜まってなくても堂河内とならヤルと思うけど」
なんてったって3回抜いた後に勃つんだから溜まってることとは関係ないよな。
「好きじゃない奴とも寝る?」
「……こともある。割とタイプだったら」
正直に答えない方がいい場合もあるんだけど。
なんか、嘘もつけなくて。
「付き合ってる相手がいても?」
「んー?? どうだろう? ちゃんと俺の相手してくれたら、そういうことはしないんじゃないのか? 俺だってそこまで節操ないわけじゃないし……」
さすがに誰かと付き合ってる時に、他のヤツと寝ることはない。
いくら俺でも……たぶん。
「なら、いいけど」
さっきっからずーっと俺の顔を見ている。
なんだか照れくさくなってきた。
「堂河内、おまえさ」
「なんだよ?」
「ちょっと他のとこ見てろよ」
恥ずかしいって。やった後に「色っぽい」とか言われた挙句、そんなマジマジ見られたらさ。
「いいじゃん。減るもんじゃなし」
うー……。こういうとこは会社と同じだな。
「なあ、海瀬、」
「んー……?」
「俺、毎日ここに来ていい?」
「毎日ィ??」
「それはだめってことなのかな?」
「ダメだろ、そりゃあ」
「なんで? 他に誰か来る?」
この勢いだとホントに束縛されそうだな。
……ま、俺はいいんだけどさ。
束縛されるのはキライじゃない。
それも愛情だと思うから。
「来たかったら勝手に来いよ。合鍵持ってるんだから」
「そうだけどさ」
考えてみたら、そこまで俺に気持ちを入れてくれるヤツと付き合ったことはなかったな。
俺ってまともなレンアイしてねえのな。
堂河内の頬に触れたら、口元が緩んだ。
のほほんとした笑顔に眠気を催す。
それにしても。
ニイさんが焚きつけたわけじゃなかったんだな。
あのニンマリ笑顔で「あ〜ら、惚れちゃったのねえ?」なんて言ったに違いない。
それでノンケだった堂河内のデビュー記念にあれこれ指導してたんだろう。
そういうの、好きそうだもんな。
そういうところは何となく近所のオバちゃんみたいなんだよな。
「それでさ、海瀬、」
「んー……」
いろんなことを考えつつも眠くて死にそうだった。
すでに半分夢の中。
「うまくいったら、明日、海瀬と二人で報告に来いって」
「んー……」
俺は、寝てた。
寝てたけど、ちゃんと夢の中で思った。
覚悟して行かないと写真撮られるんだぞ?
飲ませて潰してえっちい気分になったときに撮るから、あんな写真しか残ってないんだぞ?
まったく……。


眠りながら思ったことがもう一つ。
もう肌が触れたりしても我慢しなくていいんだなぁ……。

今までの欲求不満が強烈だったから、それはもうスッキリした気分で眠ることができた。



目が覚めたのは昼過ぎだった。
こんなに眠ったのも久々だ。
俺はなぜか、ヤルと爆睡してしまう。
今回は特に。
久しぶりだったからちょっと堪えた。
本当はまだ眠かったのだが、顔や首筋に柔らかいものが這いまわって、くすぐったくて目が覚めた。
「舐めるなよ、堂河内……」
「キスのつもりなんだけど」
ペロンと耳を舐められた。耳たぶを甘噛みされて、体が反応した。
堂河内はとっくにビンビンだった。
真昼間から、どうするんだよ。
「やめろって。……したくなる」
「すればいいじゃん。なあ、しようよ?」
結局、ソレか。
「体、辛いんだよ。続けては無理」
ピシャリと言い放たれても堂河内はめげない。
思いっきりキスをしてからニッカリ笑った。
「じゃ、練習の成果でも見てみる?」
言い終わらないうちに布団に潜り込んだ。
当然、アレだ。
したいようにさせておくことにしたものの……意外と上手いから俺もすぐにいってしまった。
吐き出すようにとティシュを差し出したが、堂河内は真面目な顔でゴクンと飲み込んだ。
「……う〜ん、複雑かつ微妙な味だな」
「だから止めとけって言ったのに。」
それでも一生懸命俺に合わせているらしい堂河内に愛しい気持ちが増していく。
「なあ、堂河内、」
「なんだ?」
「俺もしてやろうか?」
「うん。して」
即答だった。しかも目が熱っぽい。
実はして欲しかったんだろう。
おかしさを堪えて股間に顔を埋めた。
硬く立ち上がったものは含むと口いっぱいに特有の味が広がった。
溢れる透明の液が唾液に混じって喉を通過していく。
わざとクチュクチュと音を立ててしゃぶっていると堂河内の体がビクンと震えた。
ドクドクと脈打ちながら俺の口の中に遠慮なくまったりとした液体を放出した。
「おまえ、早すぎるって」
「海瀬が上手すぎるんだよ」
モノは慣れだからな。
嫌でも上手くなる。
ぺろぺろと舐めてやるとまた少し反応し始めた。
けど、硬くならないうちに止めておいた。
堂河内の熱っぽいキスを受け、その先をかわしてバスルームに向かった。
熱いシャワーが心地よく肌を流れていった。
こんな事があっても、会社で今まで通りに振る舞ってくれるだろうか。
少し心配だった。
なのに、堂河内からは自信満々の返事。
「大丈夫。男は初めてだけど、社内恋愛は初めてじゃないから」
……社内恋愛って、誰としてたんだろう??
俺にさえわからないくらいだから、まったく態度に出ないんだろう。
ちょっと、複雑だな。



夕方、結構早い時間に二人で店に行った。
「あら、まあ、まあ、まあ、」
ニイさんはニマニマ笑いながら店のドアに『本日休業』のプレートを掛けてきた。
「カナちゃんを呼ばなくちゃ」
カナちゃんというのが例のカメラマンの彼氏だ。
なんだかんだと言いながら、ずいぶん長いこと付き合っている。
電話をかけるとすぐに店に飛んできた。
もちろん、カメラを持って。
「おめでとう」
ニイさんは俺じゃなくて堂河内に祝辞を述べた。
「どうも、いろいろお世話様でした」
堂河内が丁寧な礼を言った。
でもって、ニイさんは、「よかったわね、洸ちゃん」と後でこっそり俺に言った。
「息子が結婚する気分だわ」
などと涙ぐまれて俺は閉口したけれど。
カナさんは何気なくカメラを構えていて、ことあるごとに俺と堂河内を写していた。
「そんな、撮らなくてもさ」
いつもならキスしてる時とか、じゃれてる時とか、そういうエロい場面だけしか撮らないのに……。
「海瀬クン、今日は特別に色っぽいよ」
カナさんまで感慨無量みたいに言うから、俺も疲れてきた。
ぜんぜん、そんなことないはずなんだけど。
もう酔っ払っているのかもしれないと思って放っておくことにした。
堂河内はなんだか落ち着かないみたいで、さっきからソワソワとトイレに行ったり、顔を洗いに行ったりしてた。
「ちょっと二人にしてあげるわね?」
めっちゃ嬉しそうに言いながら、ニイさんとカナさんは店の奥に消えた。
なんだかいつもと違うこのノリが妙に照れ臭かった。



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