No Good !
- 6 -



本当に目が覚めたのは翌日の昼前で、二日酔いではなかったものの、妙に体が痛かった。
当然、俺はもうドレスなんて着ていなかった。
……っていうか、ナンにも着てなかったんだけど。
「おまえ、俺になんかした?」
覚えのある尻の痛み。
目が覚めるなり、堂河内に問いただした。
堂河内はしれっとして、
「ごめん。あんまり色っぽかったから、つい」
とほざいた。
「萌えたぜ〜」
「……変態」
かすかな記憶が蘇りそうになり、俺はあえてそれを記憶の奥深くに閉じ込めた。
思い出さない方がいい。
とにかく、体は言うことをきかなくて、せっかくの日曜日を俺はベッドの中で過ごすハメになった。
食事も風呂も堂河内のお世話つきだ。
「海瀬、まだ痛い?」
「痛いよ。特に尻が。おまえ、寝こみ襲うってどーゆーことだ??」
「いや、ちょっとさ、萌えちゃって……」
悪いと思ってないだろ、コイツ。
「ちょっとでこんなになるかよ」
「ごめん。けど、俺、一生忘れないから」
とか言いながら抱き締めるし。
まったく。
「……いいんだけどさ、別に」
俺も甘いよな。
ノンケだと思って告白もできずにいた相手が俺を好きだって言ってくれてるんだから、これくらいは許してやろうと思った。
そりゃあ、こんな痛みは久しぶりだけど。
それにしても。
堂河内がこんなことをするなんて、俺、もしかして酔っ払った挙句に乱れまくったのか??
それについては前科があるから、ちょっと心配になった。
「なあ、俺、何か変なことした?」
堂河内は冷たいアップルティーを入れながら少しだけ笑った。
「変ってことはないけどさ。……もう、酒はあんまり飲ませないようにしようと思ったよ」
ってことは、やっぱ、ナンかやったんだな。
「思いっきり飲みたい時は、家で二人で飲もうな?」
堂河内に言い含められてしまった。
「ってことは、コレも俺がねだったとか?」
そうに決まってるけど。念のための確認。
「いや。えっと、なんて言うか、ハッキリねだられてはないんだけど……誘惑されたって感じかなぁ……。『もっと』とか言われて俺も調子付いた」
それは酔ってなくても言うからな。
「ごめんな」
堂河内があんまり悪いと思ってない顔で謝った。
まあ、いいか。
だいたいいつもこんなだし。



その日から、堂河内は妙にいっぱい酒を買ってくるようになった。
もちろん部屋で飲むためだ。
飲むたびに俺の記憶は途中からぶっ飛んだが、それは気にしないことにした。
ただし、翌日あまりにも辛いので堂河内にはオアズケをさせることにした。
「酒盛りは週末限定な」
「え〜っ??」
むろん、二日酔いで辛いわけじゃないからだ。
堂河内はちょっと不満そうだったけれど。
俺にだって都合というものがある。
「会社に行く前の日はダメだ。絶対ダメ。いいな?」
「う〜……まあ、仕方ないかぁ。じゃあ、金曜ってことで」
素直に承諾した堂河内は、金曜日になると速攻で帰るようになった。
「堂河内は?」
「帰りました〜」
5時10分に会社にいないヤツって、どうだよ??
まだ派遣社員でさえ働いてるのに。
俺だってまだ仕事してるんだから一人で帰っても仕方ないだろ?
「そう言えば堂河内クン、最近テニスもゴルフも行かないよね」
「彼女かぁ。そう言えばあの日からですよね〜」
堂河内が楽しそうにコンドームを買った日のことを未だにみんな覚えているんだよ。
会社ってところは怖いよな。


「もっと早く帰ってこいよ、海瀬」
帰ると堂河内はすっかり酒の用意をして待っている。もちろん、つまみと、ちょっと腹に溜まるものもテーブルに並べて。
軽く食ってから酒に行く。
そうやって毎週飲んでいると、いいかげん俺もちょっとずつ強くなる。
とは言っても、堂河内は俺がどれくらい飲むと酔うか分かっているようで、一定量以上は飲ませようとしなかったが。
完璧に寝られたら、ヤれないもんな。
「海瀬? 大丈夫か?」
俺はまだそれほど酔ってはいなかったけれど、めちゃくちゃ眠くてぼんやりしていた。
それでも普段どんなことをされているのかを確かめるべく、頑張って目だけは開いていた。
「海瀬、」
「ん……」
声が出ない。
頭がぼんやりしてきた。
「洸、」
飲んでる時は俺を名前で呼ぶんだ。
へえ……。
熱っぽい声で俺を呼びながら、服を脱がせる。
キスマークはつけないように、優しく口付けながら、堂河内の唇は首から胸、腹、下腹部へと下りていく。
足首をつかみ、持ち上げると大きく開いた足は割り開かれたまま、堂河内の目の前に恥部が晒された。
堂河内はそこへゆっくりと舌を這わせた。
先端、棹、裏筋、袋、そして、その下の蕾にまでぬめる舌先が這いまわった。
「んっ……」
「いい? 感じる?」
堂河内のものとは思えないほど甘い声が体の芯に響いてきた。
「ここでしようか? ね?」
うっすらと目を開けると堂河内のいきり立ったものが突きつけられていた。
「洸、舐めて」
言われるがままに舌を絡めた。
ヌルヌルに濡れた先端を口に含み、舐め上げると、堂河内からさらに甘い声が漏れた。
つい、真剣に奉仕してしまう。
堂河内は俺の口に遠慮なく白い液を放った後、口移しで酒を含ませた。
「今日はあんまり酔ってないのかな?」
ブランデーなんてどこから持ってきたんだか。
飲み込む喉に口付けて、また俺の顔を覗き込む。
「もっと?」
俺はちょっと首を振った。
それが間違いだった。
「まだ、意識あるんだね」
こんどは立て続けに水割りを飲ませ、むせ返る俺の体を愛撫した。
「熱くなってきたよ」
堂河内も衣服は纏っていなかった。
どうしても下半身の一点に目がいってしまう。
そこは一度放った後とは思えないほど硬く存在を誇示していた。
「もう、ガマンできない。入れるよ」
返事はしなかった。
俺のものから溢れた液は、竿を伝って腹を濡らしていた。
「もう、グチュグチュだよ? これからされることがわかるのかな?」
いつの間にか残り少なくなったローションをたっぷり手にとって、ヒクつく入り口に塗りこめた。
出し入れされる指に感じてしまい、声を上げる。
「どうして欲しいか言って?」
「……入れて……」
「何が欲しいのか言って?」
「……堂河内の……あっ……んん」
「もう、ダメ? それとも酒が足りないかなあ?」
また口移しで酒を流し込んだ。
思考能力が薄れていく。
意識を繋ぎ止めておけなくなった。
「あ、ん、ハァっ……」
指の動きが激しくなり、クチュクチュと音が聞こえた。
「もう、いいかな? 痛かったら言って?」
もちろん返事なんかしなかった。
堂河内は最初の日に俺が言ったことを守って、はじめはゆっくり挿入してきた。
俺の呼吸が落ち着いてから、少しずつ動き始めた。
「んん、っ……」
「痛い? 洸?」
「……キスしてくるなら痛くない……」
堂河内は、くすっと笑って一旦、引いてからそっと唇を重ねてきた。
「もっと……」
「気持ちいい? 洸、キスが好き?」
「ん、」
「俺、キスうまいかな?」
「ん……」
ペロッと舌先で唇を舐めてから、また、俺の足を持ち上げた。
「もう、大丈夫だよね?」
弾んだ声が聞こえてきた。
俺の意識はもうどこかへ飛んでいた。
ズンっと突かれて、ほとんど叫び声のように喘ぐ。
繰り返される愛撫に時間を忘れる。
どれくらい経ったのかわからない。
「あ、ダメっ……イク、あっ……」
放ったものが思い切り胸元まで飛んできた。
その後もビュクビュクと小さく震えた。
それでも堂河内は腰を止めない。
「もっと、だろ? 何度でもイっていいんだよ?」
激しさを増す突き上げに、またすぐに硬く勃ち上がってきた。
「ほら、いい?」
「ん、うんん、あ、っっく……」
パツン、パツン、という規則正しい音がどんどん俺を追い上げていく。
堂河内の息も乱れてくる。
「洸、いくよ……あっ……」
中で出されて、生挿入だったことに出されて初めて気が付いた。
内壁に叩きつけられた精液を感じながら、俺も果てた。
ぐったりと目を閉じると、ソファから抱き下ろされた。
「ベッド、連れてって……」
眠りたい、そう思っていた。けれど、堂河内は抱き上げてはくれなかった。
「バスタオル、敷いたから、ね?」
「ん、ん……?」
「もっと、ね?」
言い終わらないうちにうつ伏せにされ、後ろからねじ込まれた。
先が入るとググッと奥まで突き上げられる。
痛みはなかった。
放った後だというのに、はちきれそうになって濡れていた。
「腰、上げるんだよ? 忘れちゃったの? ほら。ね?」
腰を持ち上げられて、尻だけを突き出した。
背中に覆い被さるようにして、奥の奥までググッと入れられた。
それから少し抜いて、すぐにズンッと突かれる。
「あ……ぁん……」
ぎゅっと内壁が締まるのを感じて、それが俺の気持ちを余計に高ぶらせた。
「ここ? ここがいいんだ?」
角度を変えながらいいところを探し当てると、執拗にそこばかりを突いてきた。
あっという間に上り詰めて、堂河内の手の中に射精した。
「ダメ、もっとだよ? ね? もっとって言ってごらん?」
「う、もっと……あ、もっと、して……後ろ、気持ちイイっ……」
「もっと良くしてあげるよ。どう? ほら?」
ガンガン突き上げられてよがりながら腰を振った。
快楽を貪り、欲求を吐き出し、そうすることで堂河内を煽った。
「可愛いよ。洸……」
「う……んん、もっと、あ、もっと、奥も……もっと擦って……」
直に触れる粘膜と堂河内の皮膚が境目さえわからないほど熱を帯びていく。
「う、ん、あっ、ああっ……」
もうダメだ。
酔いのせいじゃない。
俺は意識を手放した。



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