Tomorrow is Another Day
ものすごくオマケ


<DVDを見た。> 


冬休みの朝。
テレビで「おすすめのDVD特集」っていうのをやっていて。
中野が新聞を読んでいる横に座って一人でそれを見てたんだけど。
「あー、いいとこで終わっちゃったなぁ……」
すっごい気になる場面のあと、いきなり別の話の紹介になっちゃって。
「あのあと、どうなるのかなぁ……」
すっごい気になるんだよなぁって思ってたら、中野がコートを着た。
「ねーどこ行くの? 一緒に行ってもいい?」
中野はタバコを買いに行くだけだったみたいだけど。
しつこく後をついていったら、映画を借りられるお店に連れていってくれた。
「じゃあ、借りてくるね!」
待っててね、って言ってみたけど、中野も一緒にお店に入った。
コンビニだっていつも一人だから、ついてきてくれなくても大丈夫なのにって思ってたけど。
「うーん、でも、一人ではちょっと貸してあげられないかな」
お店の人にはそう言われてしまった。
「もしかして、俺が身元不明だから?」
自分のうちがないから、「会員住所」のところに何も書けなくて。
だから、きっとカードが作れないんだって思った。
「そうだよね?」
お店の人に聞いてみたけど。
「……その前に、猫だからね」
そう言われて、ちょっとショックだった。


結局、中野の名前でカードを作ってもらって。
それから、テレビでやってたやつを借りた。
「中野も見るよね?」
楽しみだなぁって思いながらスキップで中野のうちに戻った。
「ただいまー」
さっそくテレビをつけてもらって。
「ここに入れればいいのかなぁ」
迷っていたら、中野が全部やってくれた。
「うわーすごいかも」
中野はテレビなんてめったにつけないくせに、家にはなぜか大きくていいやつがあって、映画もすごく迫力があった。
「映画館みたいだなぁ。……入ったことないけど」
でも、きっとこんな感じって勝手に思ってそう言ってみたら、中野はちょっとだけ呆れた顔をした。
「だって入れてもらえないんだよ」
もっと小さい頃、子供はタダだって聞いたから行ってみたけど、入り口でつまみあげられて、ポイってゴミ捨て場に投げられてしまった。
ちょっと悲しい思い出だけど、でも、中野のうちで見る方がずっと楽しいから、そんなのは別にいいやって思った。


映画は思ってたとおり、すっごく面白くて、途中で何度も息をするのを忘れてしまったけど。
終わりの方でまた事件が起こるような感じになってて。
「えー……ここで終わっちゃうの?」
今ちょうど続きの話を映画館でやってるみたいだった。
映画の予告を見ながらちょっとだけため息。
「……見たいなぁ」
でも、猫は映画館には入れないんだよなぁって、またちょっと悲しくなった。
「またすぐに借りられるようになるよね?」
そしたら、また中野のうちで見てもいいかなって。
すごく小さな声で言いながら、ちらっと顔を見上げてみたら、中野がポイッてこっちに会員カードを投げた。
取りそこねて思いっきり顔にぶつけてしまったけど。
「わー、大事にしておかなくちゃ」
ゴミ箱からさっき中野が捨てたばっかりのコンビニの袋を拾って、それをしまって。
忘れないようにしようって思いながら、廊下の隅っこに置いた。
「ここなら絶対に忘れないし、なくさないもんね」
俺って頭いいってほめてたら、なぜか中野は冷たい目で煙を吐いた。
でも、くつ箱の一番下の段にそれをしまってくれた。
ここなら俺でも手が届くなって思って。
一回閉めてみて。
でも、もう一回開けて。
「なんか楽しいかも」
これから中野のうちに遊びに来たときは、ちゃんとカードがあるか確認しようって思いながら、またくつ箱を閉めた。
「あのね、中野」
ありがとねって言おうと思ったのに。
振り返ったら中野はもういなかった。
「……置いていかれちゃったかも」
しかも、廊下と部屋の境い目にあるドアがもう閉まりかけてて。
「ねー、待ってよー」
あわてて中野がタバコを吸ってるソファまで走っていった。

中野と二人の冬休み。
「こんど闇医者にも話してあげようっと。ちゃんと覚えておかなくちゃ」
だから。
明日も中野が休みだったら、もう一回いっしょに映画を見ようって思った。



                                           end


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