そのクラブの名前は『Type-B』。
最初オーナーは従業員がいつか玉の輿に乗れるようにという願いを込めて、『Cinderella(シンデレラ)』にしようと計画していたのですが。
「そのセンスには賛同いたしかねます」
従業員の一人にそう言われ、渋々現在の名前に変えたのでした。


そんないきさつを持つ店『Type-B』の従業員は、オーナーを除くと全員が猫です。
「どういうわけか男ばっかりだな。……まあ、ネコだってことが重要なんだから、性別はどっちでもいいか。みんな、ちゃんと愛想良くしていいところにもらわれていけよ」
オーナーの北川がどんなにそう言っても、看板息子の麻貴(生後三ヵ月)はソファーの真ん中でだるーんと垂れているだけです。
その下では平らな床でつまずいて転び、「痛かったかもー」と暢気に鼻先をこすっているマモル。(捨てられっ子暦半年)
「だいじょうぶ、まもちゃん? ばんそうこう貼ってあげようか?」
優しく声をかけたのは、その友達のぐれ。(昼間は花屋の看板息子)
店の奥には拾いたてほやほやの予備軍もいましたが、健康診断を終えたばかりで、まだまだ店には出られそうにありませんでした。
「今日はこのメンバーでスタートか……」
あと1時間もすればバイトも揃って、全部で20名程度になる予定でしたが、それまでこの3名に任せるのかと思うとさすがのオーナーも頭痛がしました。
「なあ、ショウちゃん、会計はまだいいからフロアに出てくれよ。あのメンバーだとショウちゃんだって心配だろ?」
頼むから、と雇用主に頭を下げられても。
「レジが好きなんです」
きりりとした顔でそう返す片嶋。(飲酒暦○年。実は売り上げナンバーワン)



『Type-B』は、そんな猫たちがホストをつとめる新宿裏通りの癒しスポットなのです。

……え? バックにヤク○なんてついてないですよ?




         つづき→ 会計係 / 一応接客係 / フロア見習い



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